農家型住居
築200年の元農家さんのご自宅を弊社ラボ(マテリアルアーカイブとテストキッチン)として活用させていただいています。都市部に発達した京町家は、限られた間口と敷地のなかで商業と居住の機能を両立させるため、通りから敷地の奥へと空間が連なる構成を特徴とします。これに対し、農村部の民家は、農作業をはじめとする生産活動と日常生活を支える空間として形成され、四室を田の字状に配する間取りなど、農村の暮らしに即した構成が発達しました。
土間には、今では珍しい五口の現役おくどさん(竈)を囲み、表には川、裏には山。しっかりと京都市内でありながら、数十年前までには、田んぼと畑が広がり、栽培や採集による食べ物が多く、おくどさんが途切れず活用されてきた歴史の恩恵を受けています。
本プロジェクトでは、西洋由来の「建築家」という近現代の職能をあえて介していません。大工と左官の手仕事で空間を構築します。健在の建材と対話し、現場で都度判断できるプロフェッショナルの腕の魅力が詰まっているのです。かつて宮中の建築組織において、壁を塗る職人を「左官」と呼んだのに対し、木を扱う大工の長は「右官」と称されていました。弊社では、この「右官と左官」の阿吽の呼吸で、今を生きる住居を再読しています。